良いブランドマネージャー(プロダクトマネージャー)は予測して見抜けるものか?

あなたの会社では、どうやってブランドマネージャーを選抜していますか?

よく考えてみると「そのプロセスや基準が妥当なのか」についてはしっかり検証されないままに選抜や任命が続けられているという実態もありそうです。

聞き取りした結果では、MR経験者からブランドマネージャーになるケースが6割以上を占めています。恐らくどの会社でもこれがメインルートと言えるでしょう。MRの次に多いのは、臨床開発、学術(資材作成担当)などからの異動です。

もちろん、他社から経験者を採用するケースは外資系を中心に一定以上ありますが、ここでは社内からの異動をベースにどのような選抜システムが妥当なのか、そしてその検証をどうするのかを考えてみます。

 

「MRのなかで若くて成績が良くセンスのいい、感度の高そうなのを選んで、ブランドマネージャーに任命している」という回答をしてくれたのは、ある大手製薬会社のマーケティング部長です。感覚的にはわかります。

ここで提案するのは、「MRのなかで若くて成績が良くセンスのいい、感度の高そうな」人物をどんなプロセスで選抜するかに関する提案と思って下さい。下記6項目が提案です。

  1. 売上げ成績(達成率、グロス金額、重点品・製品別) 全国上位10%程度
  2. 行動指標KPIの達成率 基準以上・主要達成
  3. プレゼン力 上位20%
  4. 判断・思考力 上位20%
  5. メディカル理解力 社内試験上位20%
  6. 社内コラボレーション力 平均以上

これら1~6で絞ったのちに、年齢要因(たとえば30代前半)、経験要因(たとえば大学病院経験必須、あるいはGPでの経験必須、2カ所以上のエリア担当経験、チームリーダー経験など)を製品の特性に応じて設定することで、候補者リストをつくることが可能です。成績などは変化しますので、毎年、こうした選抜を行なってリストを更新することが可能です。

ポイントは、必要になる前から、候補者リストができていることです。

企業のBCPと同じですね。火事になってからでは遅い!

 

余談ですが、私自身が34歳の時にMRから突然プロダクトマネージャーに選ばれたとき、その選抜理由は明かされませんでしたが、数年経ってから上司の役員からそのワケを聞く機会がありました。当時の会社は抗がん剤、経腸栄養剤、抗生物質という3領域の製品を扱っており、領域毎に販売方法(顧客へのアプローチ法)が全く異なっていました。私の場合は、たまたまどの領域でも上位5位以内に入っていた、つまり「ダントツではないものの、3領域のバランスが良かった」ということが選抜要因だということでした。グロス金額合計ではトップではないものの、3領域とも5位以内に入るMRは当時めずらしかったらしいのです。

 

私のことはさておき、上記のようにして作成しておいたMRの候補者リストから、必要な時点でブランドマネージャーを任命するのが実際的です。

もちろん、本人には何も知らせていませんから、その時点で家庭の事情で異動できないMRもいるでしょうし、支店長などが現状のMRでいることに引き留めることも無いわけではないので、リストに着けた順位に沿って粛々と当たって行くことになります。

 

こうしたシステムの検証作業は、ブランドマネージャー任命の1年後と2年後の考課結果をもとに行なえるはずです。1~6で「妥当だ」と仮に判断したわけですが、実際にブランドマネージャーとしてのパフォーマンス予測をもし大きく外したとすれば、それはどの項目由来なのか、何が妥当な予測因子であったのかの検討会を、別途設けることで可能になるはずです。

たとえば、思った以上に着任後の本社内各部署とのコミュニケーションに問題があるブランドマネージャーだったとします。その場合、上記6の「社内コラボレーション力:平均以上」という表現(基準)では曖昧すぎるのではという考察が得られ、どのようにしたらより具体的な「コラボレーション・コミュニケーション」の能力や実態を計測(予測)できるのか、という議論に進むでしょう。

これらは、たったひとりのブランドマネージャーのケースで判断は出来ませんので、複数名がこのプロセスで選定され、データを蓄積してから行なうことになるでしょう。

 

完全なシステムをめざしても難しいわけで、まずはできるところからスタート(リーンスタート)させて、その仕組みを検証することが大事ですね。

あなたの会社はいかがですか?

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