ブランドマネージャーに任命してからの初期トレーニングをどうしましょう?

ブランドマネージャーとして任命後の初期、おおむね2年以内のトレーニングをどうするかをここでは考えます。医師や看護師、MRでは詳細に初期トレーニングプログラムが公式に決まっているのに対し、ブランドマネージャーでは残念ながら無法地帯になっています。

 

ブランドマネージャーになると、その日からおびただしい量と種類の仕事が待っているので「ゆっくり研修などしている時間はない」、という現実がまずあります。

 

おそらくOJTなど日常業務を通じて仕事のやりかたを学ぶことが一番でしょう。実際、ブランドマネージャーが業務上で判らないことに出くわしたとしたら、同僚に聞く、上司に尋ねる、社内のイントラで探す、過去の実績や記録を見る、検索する、生成AIに訊く、などの方法で対処するはずです。実際、我々の学びの70%はon-the-jobから来るというデータがあります。

これは 70-20-10の法則(70-20-10 Guidance)といわれるものです。みなさんは聞いたことがありますか?

我々の学びのうち70%はオンザジョブのアサインメントつまり業務経験そのものから来ていて、20%は(直接の仕事以外の場で)他者から学び、残りの10%を正式な研修から学んでいる、という数字です。これは米国のCenter for Creative Leadershipが1980年代に行なった調査から得られた結果です。成功したリーダーたちに対して「あなたはリーダーシップをどのように学びましたか?」という質問をしたその回答結果です。

この数字をそのままブランドマネージャーの学びに置き換えることは意味がありませんが、おおよその感覚はつかんで頂けると思います。

 

そうした背景を理解した上で、ブランドマネージャーの初期研修について、ここでは3つの提案をします。

 

  1. 提案1:ブランドマネージャーとして着任する1~2週間前に、つまりまだMRとして引き継ぎなどをやっている時に2~3日のマーケティング研修を実施する(時間が捻出しやすいのはブランドマネージャーになる前なので)
  2. 提案2:最初の1年間は同じブランドマネージャーの先輩をメンターとして付ける(製品や領域は異なっていても構わないので、数年先輩で相性の良い人物。メンター自身の育成効果も大きい)
  3. 提案3:ブランドプランの部門内共有を四半期ごとに行ない、レビュー(指導)する態勢にする

 

ブランドマネージャーの仕事のうち、最も困難が伴うのはブランドプラン作成です。

KOLマネジメントや、講演会企画、学会対応などはMR業務の延長でも実行可能ですが、プラン作りはしっかりとしたロジックと、市場理解が求められます。

 

この点で言えば、現在のブランドプランを多くのブランドマネージャー(同僚)たちがどのように作っているのかをもっと社内共有しなければ、OJTでの学びが深まりません。現在はサイロ現象がどの企業でも強く表れていて、「自分の製品以外のことはほとんど知らない」という状況で動いているケースが多いのです。少なくとも四半期毎に数製品ずつでもプランのレビューや共有があると、良いブランドプランはどういうことを押さえているのかが学べるはずです。

 

働き方改革は、ブランドマネージャーの仕事ぶりも大きく変えてゆくでしょう。そのなかで、どのようにその育成を仕組み化し、見える化していくのかを考える必要性が、これからいっそう高まってきていると言えます。

いまがどうであれ、始めるのに遅すぎるということはありません。マーケティングインサイツが、そのスタートをお手伝いすることもできます。