こんにちは。医薬マーケティングのトレーナー、尾上です。
先日
実はひょんなことから、ある外資系製薬会社の若手MRが薬剤師向けに製品紹介のプレゼンテーションをする場面に居合わせ、その内容を聞かせてもらう機会を得ました。
プレゼンターとして前に立ったのは30歳ぐらいの女性MR。30名ほどの薬剤師と(私のような)オブザーバーがいる中で、ものおじせずなかなか立派な(自社製品紹介)プレゼンだったのですが。
おそらく社内で何度も練習し、現場でも実践経験を積んでいるのでしょう。製品知識も不安そうなところは見えず90点以上は付きそうな内容でしたが、ひとつだけ「惜しい」と思うところがあったのです。
それは、実に簡単なことなのですが、意識してやれているひとは周囲を見ても決して多くありません。
そのひとことを変えると効果が倍増するポイント、それは
20枚ほどあったスライドの、それぞれの説明の「出だし」部分のセリフなのです。
全体の9割、つまり18枚ほどのスライドの出だしが、こう始まっていたのでした。
「それでは次にXXXXですが」
「では次にXXXについてご紹介します」
「はい、ここでXXXがどうなっているかといいますと」
・・・・
セリフの「XXX」部分には何が来るかと言いますと、
作用機序
使用上の注意
効能効果
薬剤の特徴
臨床試験結果
などですね。
そして、お分かりのとおり、この「XXX」は各スライドの上部に表示されている「タイトル」でもあるわけです。
そうです、パワポを送って新たなスライドが出たところで初めて、上部にあるスライドタイトル(例えば、「使用上の注意」)を読み上げるかたちで
「では、次にこのZZ(製品名)の使用上の注意ですが、まず・・・・」
という出だしのセリフになっているのです。
もったいない
このあとは、ほぼ満点の説明なので、思わず「もったいなすぎる!」と口走りそうになりました。
つまり、スライド間のつなぎのセリフにひと工夫あると、各段に良くなると思うのです。
では、どうつなぐのか?
簡単です。スライドを送ってしまってからではなく、次のスライドが出るくる前に「つなぎのセリフ」を言って、しかも一呼吸置いてから送るのです。
そうすることで、次にどんなスライドが出て何を説明するのか、それが今のテーマとどう関係するのか、それらをあらかじめ知っていて、余裕を持ってプレゼンしているように見せます。
これがないと、スライドを送ってみて、初めてそのタイトルを見て「次にXXXですが」と、ただ読み上げているように思われてしまいます。
当該のスライドの説明が終わったら、「つなぎのセリフ」をかならずはさんでから、次のページに送るのがポイントです。
図示するとこんな感じになりますね。
これは、寺沢俊哉さんの著書「人前で話す・教える技術」(生産性出版、2017年)の155頁にも「スライドとセリフ」として紹介されています。
つなぎのセリフ
これは、一般的には接続詞とよばれるものですね。
あなたは、自分のプレゼンのなかでどんな接続詞を使っているでしょうか?
したがいまして
このため
その結果
あたりはどうでしょうか。
さらに
まず
第一に
具体的には
実際
もあるでしょうか?
これに対して
ところが
といいますのも
ただし
言い換えますと
語彙が豊富で、こうした接続詞が使分けられるようになると良いですね。
接続詞も奥が深いです(笑)。興味のあるかたは、国立国語研究所の石黒氏が書いた
石黒圭「『接続詞』の技術」(実務教育出版、2016年)にしっかりまとめられていますので一読をお勧めします。
クスリの説明会の場合
我々の場合は、単純に接続詞だけに頼るのではなく、内容を加味して以下のようなつなぎが可能です。
「・・・このような作用機序が、それではどのような特徴をもたらすかを次にご紹介します」
(作用機序のスライドから、薬剤の特徴に移行する際に使う「つなぎのセリフ」例)
「・・・このような効能効果を有しておりますが、患者さんに処方いただく際にぜひ留意頂きたいことが、次の使用上の注意です」
「・・・このような効能効果を有しておりますが、患者さんに処方いただく際にぜひ留意頂きたいことが、こちらになります」(と言って次の使用上の注意のスライドへ移行)
(効能効果のスライドから、使用上の注意に移行する際に使う「つなぎのセリフ」例)
全てではなくとも、何枚かはこのように内容を反映させた「つなぎのセリフ」を持っておくと良いでしょう。
これはプレゼンのパワポを印刷して1枚ずつ「どうつなぐか」のセリフを考えて書いて行くと良いのですが、実際にはパワポの配布資料(例えば「6スライド」モード)などで印刷することでやりやすくなるでしょう。
先に言えるか、送ってから言うのか
図の黄色い部分のセリフを、スライドを送ってしまってから言うと、ただスライドタイトルを読み上げているだけのように受け取られ、これをスライドを送る前に言うと、次に何が登場するかをわかって紹介しているように受け取られる、これだけの違いだったんです。
接続詞だけで
「これらのことから・・・・」、「まず第一には・・・」、「と、言いますのも・・・・」(と言ってから次のスライドに移行)したり、
「一方、XXXについてですが・・・」と言って、接続詞プラスアルファで、次のXXXのスライドにつなぐなど、くどくならない構成を考えることができるでしょう。
ひとりよりもチームで
こうしたことはひとりでもできますが、発想が限られます。チーム内で検討してみるのはどうでしょう。おそらく15分もあればすべての「つなぎのセリフ」を完成させることができるはずです。チームでワイガヤで作ってみて、各自がやってみる。いつものプレゼン練習会とはちょっと違った面白さが出るでしょう。
セリフができあがったら、ご自身のプレゼンをZoomで録画するなどして、確認してみることができますね。
今回は、あなたの製品プレゼンをランクアップさせる、つなぎのセリフの使い方の紹介でした。
オンラインでも対面でも、うまく活用して効果が上がることを祈っています。